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この世界の片隅に〜我が田舎版。

日本が第二次大戦に突入した時、当然長野の山奥の我が村にも召集令状が届いた。

幸い?というか、ウチの家系は、たまにオレみたいにずば抜けて背の高いのが生まれるけど、男女関係無く背が低い。

大工を生業にしていた事も関係していたのか、祖父はその背の低さで戦地には行かず、村の警備隊隊長を任されたそうだ。

山奥の戦争とは程遠い村だけど、西から東へ、東から西へと、日本の戦闘機が山肌をえぐるように飛び交っていたそうだ。敵のレーダーに探知されない為に。

そうした意味では、軍事的に重要な場所ではあったのだろう。

そんな祖父も亡くなり…

あれは一周忌だったのかな?

今でもよくあるんだけど、オレに聞かれても構わない、そういうことなのか…それとも存在を忘れられてんのか?

多分、聞かれても誰かに喋ることはないだろう、そうした安心感みたいなのがあったんだと思う。

何しろ二十歳の頃には独り立ち,個人で大きな仕事をしていたから。

で、お爺ぃの「今だから笑える話」を、叔母さんたちがビール片手に話し出す。

「わしゃ、お爺ぃの葬式にあの人まで来るとは思わなんだわ」

「ホントな、ビックリしたわ!」

「○○さんと○○くらいは知っとったが、まさかあの人もそうだったとは思ってもみなんだわ。」

「分からんもんだな…まだ他にもいたかも知れんに…。」

「お婆ぁもまぁ、よく我慢したもんだわ。」

「ホントになぁ…。」

この会話だけで、オレは何を言ってんのか察しはついた。

だってお婆ぁがまだ元気な頃、田んぼの水はり点検の折りに何度か聞かされてたから。

戦争当時、村の若い連中まで赤紙が届いたから。

中には結婚して直ぐ駆り出された家庭も。

警備隊、また代々の家業の大工をしていたお爺ぃは、そのどちらでも、独り残された家庭に出向く。

戦地の夫の身を案じつつも…どちらがモーションかけたか、かけてやしないかなんて知ったことじゃない。

ただ…やはり女だって、そりゃ…。

ましてや背は低くても、お爺ぃはそうとうの二枚目、若かりし頃の写真を見せてもらったことがあるけど、今で例えると福山雅治,海外俳優で例えるとピーター・フォンダばりの顔だち…(オレにはほんの僅かしかその要素を遺伝してくれてない)

拒んでも、結局はそういう関係になってしまうのだ…。

こんなことだって戦争のせい、決してお爺ぃや相手が悪いワケじゃない。

で、叔母さんたちが喋っていた話ってのは、同級生やなんかに、腹違いの兄弟、姉妹がいたってこと。

実際、お爺ぃの葬式のときには、村の出身含めて、ほぼ全員来てくれたから。

だって葬式会場に入れないくらいに…。

…だけど、笑って話してもいいのは叔母さんたちだけだよな…。

お婆ぁがその当時を思いだしつつ、オレに話してくれたあの横顔…

あれを見てるから。

また世の中が慌ただしく、良くない方向に向かっていってる。

今度戦争なんかが起きたら、または起こしたら、

何年か先に、こうして笑って話せる人など…話す人すら残らないだろう。