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3日坊主と黙(だんまり)市

あれから洪水ちゃんは、係りの仕事をするようになり、みんなを少し驚かせた。いつまで続くかな、3日坊主なんじゃないかなと、息子や友人たちは話したが、授業のある日はあと3日だったので、3日坊主で十分だと気づいて笑った。

終業式の前日、息子は担任に私の手紙を持っていった。今年は書かずにすむかなと思ったけど、また書くことになったなあ。担任のところに行ったのをFが見ていて、ぼくのこと?ときいてきたらしい。息子は答えなかったらしいけど、そうだよ、きみのことだよ。

訊いてくるところをみると、すこしは悪いことをしているという自覚はあるのかな。

で、先生からお電話。

どうしましょうか。

ふたり、よくない関係になってると思うんです。

よくないですね。

私の希望を言えば、クラスを離してもらいたいです。

もちろんです。

そのうえで、息子のこととは別に、F君の指導をしてもらいたいです。F君も、いまのままでは、信頼されないし嫌われるし、やっていけないと思います。

わかりました、そうしましょう。

それから担任は息子にきいたらしい。Fに話をするときに、君の名前を出していいか。出さない方がいいか。

出さないでください、と息子は答えたらしい。

終業式のあと、部活に行ったら、こないだ優先座席のシールをくれた先輩がいた。シールのお礼に、息子はSLやまぐち号を撮ったDVDを渡したらしいのだが、先輩は今度は本をくれたらしい。

極端に無口な先輩で、授業の発表のとき以外は、喋らないらしい。これ、もらっていいんてすか、と訊いたら、頷いて笑って行ってしまったので、もらってきた。

『キハ65形ディーゼル動車』という本。四国鉄道学園著。昭和43年の本。教科書のようだ。なかにはアンダーラインと書き込みがいっぱい。この本で一生懸命勉強した人がいたのだ。かれこれ半世紀前に。

お父さんかお祖父さんが鉄道関係の人かな。でも喋らない先輩なので、そういうことはさっぱりわからないらしい。

息子、喜んでいるけど、めちゃくちゃ難しそうな本だよ。読めるのか。

黙市(だんまりいち)という言葉を私は思い出したりした。津島佑子の小説のタイトルだった。どんな話か忘れたけど。

黙って、ものがゆきかう市がある。ほんとに、あるんだなあ。

この2日間、学校から帰った息子は、眠りつづけている。日頃の疲れがどっと出た感じ。学校から持って帰ったあれこれのものを、片付けられる様子でもないので、私が片付ける。ついでに、いるかいらないかわからなくて取っておいた紙屑の山、テストやお便りの1年分のあれこれも、処分する。電車の絵の落書きは、さしあたりとっておいたけど。