読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

>(5)既存の外交・安全保障への回帰?>。「世界の警察官」を放棄するはずだったトランプ政権が、自国民を毒ガスで苦しめるシリア政権に対し、人道目的で介入する事態は100日前には想像できなかった。 【了】

【前の日記より】

(5)既存の外交・安全保障への回帰?

いうまでもないが、内政と異なり、外交・安全保障では、大統領の権限は大きい。大統領は「国家元首(ヘッド・オブ・ステート)」であり、「主席外交官(チーフ・ディプロマット)」として外交の最高責任者であるほか、「三軍の司令官(コマンダー・イン・チーフ)」として、軍事上の最高者も兼ねている。諸外国との関係の中では、臨機応援に対応する役割が必要であり、その権限が大統領に与えられている。国を代表した瞬時の判断が必要であり、大統領の外交上の権限が大きいのは、あくまでも与えられたルールの中での政策運営の一環であると考えればいいのかもしれない。

その外交・安全保障外交の方は、トランプ政権発足前後はあまりにも言葉が軽く、大きな混乱が続いていた。だが、日米関係に始まり、NATOとの関係、米中関係、パレスチナ問題など、これまでのアメリカの政権とほぼ同じ立ち位置に戻りつつある。

さらに外交・安全保障外交の政策形成過程もやや落ち着きつつあるようにもみえる。経験豊かなマティス国防長官や、マクマスター安全保障担当補佐官らがトランプ外交の主軸になったためである。ロシアとの密接な関係が疑われているフリン前安全保障担当補佐官が2月に辞任したほか、偏った発言が目立っていたバノン首席戦略官が国家安全保障会議NSC)の常任委員から4月上旬に外れたのが大きいかもしれない。ただ、娘婿のクシュナー上級顧問が中東だけでなく、対中国や官僚制度改革など外交から内政の多くを担当する家族重視のホワイトハウスは極めて異例であり、当面はこの状況が続きそうだ。

NSC再編直後に起こったシリア攻撃では、アメリカ第一主義を掲げてきたトランプ政権の外交が共和党の既存の外交政策に回帰しつつあるようにもみえる。「世界の警察官」を放棄するはずだったトランプ政権が、自国民を毒ガスで苦しめるシリア政権に対し、人道目的で介入する事態は100日前には想像できなかった。

トランプ大統領には世論とも議会とも100日間のハネムーンが全くなかった。ただ、分極化を体現する分、今後の支持率低下も緩やかになるかもしれない。そうなったらこれも異例だ。

“破天荒なアマチュア政治”が今後どのように変わっていくのか。100日たっても、まだ、かなり不透明なのもトランプ政権ならでは、かもしれない。

前嶋和弘

上智大学総合グローバル学部教授

専門はアメリカ現代政治。上智大学国語学部英語学科卒業後、ジョージタウン大学大学院政修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『ネット選挙が変える政治と社会:日米韓における新たな「公共圏」の姿』(共編著,慶応義塾大学出版会,2013年)など。

・kmaeshima

・kazuhiro.maeshima.3

前嶋和弘の最近の記事

曲がり角を迎えたアメリカの理念:2016年大統領選挙と移民政策の難しさ 2016/11/2(水) 3:52

ヒラリー・クリントンの「私用メール問題」の憂鬱:夫・ビルの光と影 2016/6/4(土) 5:31

在日米軍をめぐるトランプ発言:メディア仕掛けのいつもの手法  2016/5/10(火) 6:48

オバマとは何だったのか:「最高で最低な大統領」 2016/4/25(月) 6:22

前嶋和弘の記事一覧へ(8)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーーー

https://news.yahoo.co.jp/byline/maeshimakazuhiro/20170424-00070222/